競売不動産の売却の準備手続き

 配当要求の終期が定められたときは、裁判所書記官は、差押えの登記前に登記された仮差押債権者、差押えの登記前に登記され売却によって消滅する先取特権、質権、抵当権を有する債権者、租税その他の公課を所管する官庁又は公署に対して、債権の存否、債権の発生原因及び債権の現存額を、配当要求の終期までに執行裁判所に届け出るべき旨を催告しなければなりません。配当要求の終期が延期され、又は変更されたものとみなされた場合に、債権届出のない債権者があっても再度その者に対し債権届出の催告をする必要はありません。

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 催告を受ける債権者のうち仮差押債権者については、仮差押え後債務者は処分制限を受けるので、仮差押えの登記後差押えの登記前に登記をした用益権の設定は、仮差押債権者が本案訴訟で勝訴すれば無効なものとして取り扱われるが、仮差押債権者が披保全債権が無いとして敗訴すれば有効なものとして取り扱われ、その用益権は実体的には差押えに対抗できることになるので、買受人はその用益権を引き受けなければならなくなり、負担付きの不動産として売却条件に大きな変動が生ずることになります。また、仮差押えの登記後差押えの登記前に登記をした担保権及び担保目的である所有権に関する仮登記については、その担保権者又は仮登記権利者の債権額を計算して剰余を生ずる見込がない場合は、仮差押えの帰趨が決まるまでは競売手続の続行は許されず、手続は停止せざるを得ないことになります。担保権者及び担保目的である所有権に関する仮登記権利者と租税主管官庁は、いずれも優先弁済権を有する債権者であることから、その債権の額によっては法六三条の無剰余取消し手続が必要となります。
 更に、担保権設定登記と差押えの登記との間に用益権設定の登記がある場合に、担保権の披担保債権が存在しないか、又は消滅していれば、用益権設定は有効となるので、その用益権は買受人が引受けなければならなくなり、担保権が存続していれば、短期賃貸借を除き、用益権は消滅するものとして売却できることになります。以上の事由により、民事執行法は、手続の安定を図る必要から、ここに掲げた債権者らに債権届出の催告をし、競売手続への協力義務を課したのです。
 差押えの登記前に所有権に関する仮登記がされている場合には、裁判所書記官は、仮登記権利者に対し、その仮登記が担保目的であるときはその旨並びに債権の存否、原因及び額を、担保目的でないときはその旨を配当要求の終期までに執行裁判所に届け出るべき旨を催告しなければなりません。
 甲が仮差押え後、当該不動産に対し乙が抵当権を設定し、その後丙が強制競売の申立てをして差押えの登記がされている場合、仮差押えの帰すうが不明であれば、抵当権の効力も未確定であるから、乙抵当権者に対しては債権届出の催告が必要です。
 これに対し、甲仮差押債権者が本案訴訟で勝訴判決を得て本執行をした場合には、仮差押登記後の抵当権はその執行手続内では無視されるから乙抵当権者には債権届出の催告を要しない。
 担保権者が現存する被担保債権の額を明らかにしない場合は、執行裁判所は登記されている被担保債権の全額について存在するものとして処理せざるを得ないことになりますが、そうすると残存する披担保債権の額によっては無剰余とならないのに、登記上の債権額によっては無剰余として競売手続が取り消されるということも生ずるので、後に述べるように法は届出不履行による損害賠償義務を課してまで、その届出の励行を促しているのです。
 催告をすべき租税所管官庁は、どの範囲のものにするかは、旧法下では実務上裁判所によって多少異なっていたようですが、税務署、市区町村役場、都道府県税事務所へ催告すれば足りるでしょう。この公課所管官庁に対するものは、交付要求の機会を与えるための通知の性質を毛布するものです。
 民事訴訟法旧六五三条ノニ、旧競売法二七条一項では、登記簿に記入されている不動産上の権利者に対して競売開始決定があった旨の通知をすることを規定していました。この規定は、民法三九八条の二〇第一項四号において根抵当権の目的となっている不動産に対し、第三者の申立により競売開始決定がされた場合には、根抵当権者がその開始決定があったことを知ったときから、二週間を経過したときに当該根抵当権が確定するものとしているのに伴ない、裁判所は開始決定の旨を根抵当権者に知らせることにしたものである。民事執行法及び同規則はこの点について何らの規定をおいていませんが、それは差押えの登記前に登記された根抵当権者に対して債権届出の催告をすることによって、根抵当権者は抵当不動産に対する競売手続の開始があったことを知り得るので、それから二週間を経過すれば、根抵当権の担保すべき元本が確定することになり、民法三九八条の二〇第一項四号の目的を達することができるからです。
 催告は、適宜の方法によってすることができます。催告をしたときは裁判所書記官はその旨及びその方法を記録上明らかにしなければなりません。
 催告を受けるべき者が所在不明又は外国にあるときは、催告すべき事項を公告し、公告をした日から一週間を経過した時に催告の効力が生ずるとされています。
 租税所管官庁を除き、催告を受けた債権者は、配当要求の終期までに債権の存否、その原因及び額を執行裁判所に届け出なければなりません。その届出をした後に弁済等により債権の存否及び額に変更が生じたときにも、その旨の届出をしなければならないとされています。元本の額の変更は無剰余取消しの関係に、完済の場合には売却条件に影響を生ずることになるからです。申立債権者以外の担保権者は、先に債権の一部を届け出た後にその額を拡張することは許されると解する。元本月賦払の債権については、債権届出書に約定の弁済方法を一覧表にして明記させます。このような債権について当初の予定どおり弁済されなかったときは、債権者はその旨の届出をします。その債権者が担保権者であり、無剰余になるかどうかという事案の場合には、毎月届出をさせるようにする。差押えの登記前にされた担保仮登記であっても、債権の届出をしないときは、売却代金の配当又は弁済金の交付を受けることはできません。仮登記担保である旨の届出はしても債権の存否、原因、順を届出ないときも同様です。租税所管官庁は催告に応じて債権届出をする義務はありませんが、配当要求の終期までに交付要求をしない限り、当然には配当にあずかれない。
 債権の届出の催告を受けた債権者が、故意又は過失によってその届出をしなかったとき又は不実の届出をしたときは、その者はこれによって生じた損害を賠償しなければならない。また届出後に届出に係る元本の順に変更を生じたのにその届出をしなかったことによる損害についても賠償の責任があります。その損害は、債権者の届出の塀怠又は不実の届出との間に因果関係があることを要する。例えば担保権者が被担保債権が支払済みであるのにその旨の届出をしなかったことにより、無剰余として強制競売手続が取り消されたため、差押債権者が再度強制競売の申立てをした場合には、前の手続に要した費用相当分は、当該担保権者に対し賠償を求めることができることになる。この場合、もし担保権設定登記後に設定された用益権があれば、その用益権は消滅するものとして売却することになるが、担保権が消滅していれば、実体的にはその用益権は買受人が引受けなければならなくなるので、買受人は民法五六八条により債務者に対し契約の解除をするか又は代金の減額の請求をすることができ、債務者が無資力のときは代金の配当を受けた債権者に対し代金の全部又は一部の返還を求めることができる。以上の手続をしても代金の回収ができない場合は、回収できない部分は届出を怠った担保権者に対し賠償を求めることができます。

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