競売開始決定後の配当要求

 配当要求とは、債権者が、自ら執行の申立てをせずに、他人の申立てによって開始された競売手続に参加して債権の満足を受けようとする手続です。配当要求を認めることについては、配当上の平等主義、優先主義との関連からも問題のあるところですが、我が国の強制執行手続は債権者平等主義を採用しており、この点は民事執行法の制定にあたってもこれを踏襲することになったため、旧法と同様配当要求を認めることになったのです。しかし旧法下では、その配当要求は無名義債権者についても認めていたために、弊害も多かったので、民事執行法では次に述べるように抜本的な是正がなされています。
 なお、旧競売法には配当要求の規定がなく、判例は古くから債務名義を有する債権者の配当要求を認めていたのですが、民事執行法は強制競売及び担保権実行としての競売手続に共通して次に掲げる債権者に限り、配当要求ができることとされたのです。

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 配当要求債権者の範囲、旧法は、債務名義を有しない債権者の配当要求も認めていたために、時に虚偽債権あるいは通謀債権による配当要求がなされ、執行債権者の権利の実現に大きな障害となっていたのですが、民事執行法は、これを改め、配当要求をすることができる債権者を、次の者に限ることとしました。
 執行力のある債務名義の正本を有する債権者民事執行法五一条一項には、同二五条の規定により強制執行を実施することができる債務名義の正本を有する債権者と規定しているので、債権者は、執行文の付与を受けたうえ、その正本を添えて配当要求をすることになる。期限来到来の債権についても債権者は執行文の付与を受けて配当要求をすることができる。二重の競売申立には、登録免許税を納付しなければならない関係で、民事執行法の下では、債務名義を有する債権者は、配当要求の方法をとるものが多くなるのではないでしょうか。
 差押え登記後に登記された仮差押債権者、差押えの登記後に仮差押えの登記をした債権者については、執行裁判所はこれを知り得ないことから、配当要求をしなければ配当にあずかれないとされたのです。
 差押えの登記後に登記をした仮差押債権者であっても、その差押え手続が取り消されたり、差押えにかかる強制競売の申立てが取り下げられ又は先行の差押え手続が停止されたことにより、仮差押えの後にされた後行の強制競売の申立てによる差押えの登記に基づく競売手続によって続行されるときは、仮差押債権者は配当要求をすることかく配当にあずかれることになります。この場合執行裁判所は、仮差押えの登記があることを知り得るからです。配当要求債権者が制限されたため、債務名義もない、先取特権もない債権者が、債務名義をとるには時間を要するので、配当要求をする必要から今後は仮差押えをして配当加入をすることが多くなるのではないでしょうか。
 なお、この仮差押債権者の中には、仮差押えの執行として強制管理開始決定を受けた仮差押債権者は含まない。強制管理は、当該不動産の収益に対する執行であり、換価代金からの満足を受けようとするための保全ではないからです。
 配当要求をすることができる債権者は、原則として有名義債権者及び差押え登記後に仮差押えの登記をした債権者に限られるのですが、社会政策的な配慮から例外的に労働者の賃金債権等実体上一般先取特権により優先権を有する債権者は、法一八一条一項各号に掲げる文書により一般先取特権の存在を証明して配当要求をすることができることにしています。
 一般先取特権は、設定されるものではなくて法定担保権です。したがって、差押えによる処分制限の効力を受けないから、処分制限後の一般先取特権も担保権者として処遇される。
 この一般の先取特権には、民法三〇六条のみならず、商法二九五条、その他租税、国又は地方公共団体の徴収金等を被担保債権とするものがありますが、配当要求の関係で問題になるのは、雇人の給料、会社使用人の雇傭関係上の債権です。期末賞与金や退職金はその実質から生活給として評価できるので、給料に含まれます。これらの賃金債権については、賃金台帳の写し、銀行振込みのない旨の銀行の証明書等が、法一八ー条一項四号の証明する文書にあたります。
 なお、建物の区分所有等に関する法律六条の先取特権者も法五一条一項の一般先取特権者として配当要求ができます。
 租税債権の交付要求は、配当要求と同一の効力を有することは旧法以来の解釈ですが、公課所管官庁は、交付要求をすれば配当を受けられます。
 配当要求のできる終期は、旧法では競落期日の終りまでとされていた。すなわち、旧法では競落許可決定の言渡しによって所有権が移転するとされていたので、それまでは多くの債権者の配当加入を認めようとし、しかも配当要求をなるべく遅くまで認めることとして、債務者の財産が競落人に移転する競落期日の終りまで配当要求が許されるとしていたのです。ところが、そのために競売期日において最高価競買申出人が出た後の競落期日前に、一般先取特権者の配当要求又は国税の交付要求があると、その要求額によっては、無剰余となって競売手続が取り消されてしまうことになり、買受申出人の地位は不安定であり、差押債権者の不利益ばかりでなく、裁判所としてもそれまでの手続が全く無駄になるということもあったので、民事執行法は、このような不合理な事態を避けるために、買受けの申出をした以後は、その手続が取消されることのないよう考慮されて物件明細書を作成して売却条件が明らかとなる直前の段階までの配当要求のみを認めることとし、そのために執行裁判所は、あらかじめ配当要求の終期を定めて、これを公告し、その配当要求の終期までに配当要求をしなかった債権者は配当等にあずかれないことにしたのです。
 この配当要求の終期は、同時に債権届出の終期でもあるとしているので、これによって、執行裁判所としては当該不動産から配当等を受けようとする債権額を把握でき、無剰余に対する判断(民執六三条一項)ができることになったのです。
 民事執行法は、執行裁判所は、差押えの効力が生じた場合には、物件明細書の作成までの手続に要する期間を考慮して、配当要求の終期を定めなければならないとしています。
 物件明細書が作成されるためには、物件の権利関係が明白になる必要があり、そのためには執行官の不動産の現況調査報告書、執行裁判所の審尋手続及び評価書が必要となるが、物件明細書の作成期間は、現況調査及び評価に要する期間によって左右されることになります。
 現況調査及び評価は、並行して行う場合と、現況調査後に評価を行う場合とがあり得るが、これに要する期間は、物件の種類、多寡によって一律には定められないので、個々の事案によって決めることになるでしょう。
 実務では、配当要求の終斯を原則として差押えの効力が生じてから二か月後と定め、例外的に物件が多数であるとか、現況調査等に長期間を要すると予測できる特別の事情があるときは、三か月先とすることになっています。
 その理由は、配当要求の終期を余り長く定められているとすると、無剰余の判断又は売却すべき物件の選択ができない関係上、直ちに売却手続に入ることができず、手続の迅速を害することとなります。占有関係等につき問題のない物件であれば、一か月程度で現況調査及び評価を終えることは容易であるとして、基準として二か月を相当と考えたのです。
 配当要求の終期が定められたときは、裁判所書記官は、競売開始決定がされた旨及び配当要求の終期を公告しなければならない。この公告は、裁判所の掲示板に掲示して行われます。
 この公告はその終期までしておくのが適当であるが、掲示場の都合でそれまでの公告が困難であれば、公告開始後最低一週間掲示しておけば足ります。
 この公告の書式例は必要最少限の事項を記載したものであるから、物件所有者の表示など配当要求をする者の便宜を考慮して記載することは相当な取扱いです。
 この公告は、この方法のほか裁判所書記官が相当と認めるときは、公告事項の要旨を日刊新聞紙とか、市町村の広報への掲載、パンフレットの配布の方法によることも考えられます。公示に要する費用は執行費用となります。
 配当要求の終期を定めたものの、権利関係が複雑のため現況調査や評価等が予想に反して長期間を要し、その報告書の提出が遅れたため物件明細書の作成手続が当初の予定どおりできないことが判明したときには、執行裁判所は、配当要求の終期の延期をすることができます。
 延期の期間は、余り小刻みにすることは煩わしくもあり、実益も少ないので、一か月くらいを単位とするのが相当であるとする見解があります。
 配当要求の終期が延期されたときは、裁判所書記官は、延期後の終期を公告しなければならない。公告は、裁判所の掲示板等に掲示してする。
 配当要求の終期から三月以内に売却許可決定がされないとき、又は三月以内にされた売却許可決定が執行抗告により取り消されたとか、買受人が代金を納付しないために売却許可決定が効力を失った場合には、当初に定められた配当要求の終期は、自動的にその終期から三月を経過した日に変更されることとし、これが繰り返されることとしているのです。民事執行法は、さきに述べたように配当要求の終期までに配当要求をするか、二重強制競売の申立てをしている場合でなければ、配当にあずかれないこととしていますが、そうすると競売目的不動産が長期間経過しても換価されない場合にも他の債権者は配当に参加できないことになり、債権者平等主義を採用している我が国の法制の下では合理的でないとの理由から、このような規定が設けられたとされています。これによると、最初に定められた配当要求の終期が、例えば三月一日である場合には、六月一日までに売却許可決定がされないときは、配当要求の終期は自動的に六月一日となり、三月一日から六月一日までの間に配当要求した者も、当初の配当要求の終期である三月一日以前に配当要求した者と同等に配当等にあずかれることになります。
 配当要求の終期の更新については例外があります。すなわち配当要求の終期から三月内にされた売却許可決定が、買受人の代金不納付により効力を失った場合に、次順位買受申出入に売却許可決定がされたときは、その売却許可決定が三月を経過した後にされても、それは三月内に売却許可決定がされたものとして取り扱われ、配当要求終期の更新の規定の適用はないことになっています。
 配当要求制度は、さきに述べたように債権者が他の債権者の申立てに基づいて開始された競売手続に参加して、自己の債権の満足を得ようとするものであるから、競売開始決定があれば、配当要求の終期までの間ならばいっでも配当要求の申立てができるのです。
 さきに述べたように、民事執行法は、執行裁判所はあらかじめ配当要求の終期を定めて、これを公告すべきものとし、その配当要求の終期までに配当要求をしていない債権者は、配当等にあずかれないこととしています。
 国税徴収法の交付要求について法は何も触れていませんが、民事執行手続こ適正、迅速化を図ろうとする趣旨から、交付要求についても配当要求の規定を類推適用し、配当要求の終期までにしなければならないものと解されます。租税債権の徴収権者側は、このように解されると配当要求の終期後に発生した税債権については、交付要求の機会を失うことを懸念するかのようですが、配当要求の終期は更新、延期されることもあるので、交付要求の機会を失う未納税債権は比較的少ないものではないかと考えられます。
 ところで配当要求の終期は、前述のように更新、延期の可能性があるので、執行裁判所は、当初の終期経過後になされた配当要求の申立てであってもそれが適法な申立てである限りそのまま受理すべきです。配当要求の終期の更新、延期があれば、適法な配当要求として配当にあずかれることになるからです。
 配当要求の終期の更新、延期がなく、配当手続が行われる場合は、終期後の配当要求債権者の債権は配当手続から除外されます。この場合特に却下の裁判を要しない。蓋し配当表に登載されないことは、配当要求を認容しないとする執行裁判所の処分がなされたものと解すべきだからです。これに対し不服のある債権者は、執行異議の申立てができます。
 配当要求の終期後の配当要求債権者は、売却代金に剰余があっても配当は受けられない。この場合は配当手続外で、例えば債務者に対して剰余金が交付される場合には、その交付請求権に対し債権差押えの方法により、債務名義のない一般先取特権者は法一九三条により担保権の実行としての差押えの方法により権利行使ができる。
 配当要求は、書面による申立てが義務づけられています。配当要求は民事執行における基本申立てではないが、重要な申立てであり、且つ、数額等に誤りが生じないために書面で申立てをすべきこととしたものです。
 配当要求書には、債権の原因及び額を記載しなければならない。債権には、元本のほか利息その他の附帯の債権が含まれ、これらの事項は各別にその額を記載する。債権の原因は旧法当時のように詳細に記載する必要はなく、原因債権が他の債権と区別できる程度に特定して記載されていれば足りる。
 配当要求書に添付すべき書類としては、有名義債権者は、執行文の付された債務名義の正本を、仮差押債権者は仮差押命令の正本と、その仮差押えの登記がされた登記簿謄本を、一般の先取特権者は、一般先取特権の存在を証する文書を、提出しなければならない。
 なお、配当要求書は、正本のほか後述の規則二七条により通知すべき差押債権者及び債務者の数に応じた副本を提出する。また、配当要求債権者は通知に要する費用を納付すべきです。この通知費用は、競売手続費用として請求できます。
 不適法な配当要求、例えば執行力ある債務名義の正本とか、一般先取特権による場合に、その権利の存在を証明する文書を提出しないとか、配当要求書に所定の手数料を納付しないような場合には、執行裁判所は配当要求を却下することになりますが、却下の裁判に対しては、当該配当要求債権者は執行抗告をすることができます。配当要求の終期に遅れた配当要求については、実務ではこれを無視し、改めて却下決定はしない取扱いであるが、遅くとも配当等の実施の前に却下決定をし、この旨を告知するのが相当です。
 配当要求債権者の債権の存否やその性質、額などを争うには、配当期日において配当異議を申し立てるか、別に債務不存在確認の訴えを提起すべきです。
 配当要求債権については、それが支払済みであったり、詐害的な配当要求であったりする場合には、債務者としては配当要求に対して不服申立てなど適当な対策を講じる機会を与える必要があるので、配当要求があったときには裁判所書記官はその旨を債務者に通知しなければならない。また、差押債権者も、他の債権者による配当要求により、自己の債権について満足を得られなくなる場合があり、その場合には差押債権者としては他の財産につき更に強制執行を申し立てるなどの考慮の機会を与えるため配当要求のされたことを差押債権者にも通知しなければならない
 なお、規則二七条は、租税債権の交付要求にっいても類推適用されるべきで、交付要求があった場合はその旨を差押債権者及び債務者に通知すべきです。
 配当要求の終期を経過してされた配当要求債権者は、配当を受けられないので、終期後の配当要求については、この通知は不要ではないかとの考え方もあろうが、配当要求の終期は前述のように執行裁判所により延期されることもあり、終期後三月以内に売却許可決定がされないときには自動的に終期が変更されるので、その場合には終期前に配当要求をしたことになります。したがって終期後の配当要求であっても通知をすべきです。

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