強制競売開始決定に対する異議

 執行裁判所の裁判その他の執行処分のうち、執行抗告のできないものについては、その是正を求めて執行裁判所に執行異議の申立てができます。競売開始決定に対しては、執行抗告をすることができる旨の明文の規定がないので、抗告は認められません。開始決定がされたものについては、最終的に売却許否決定について抗告が認められるので、何回も抗告を認める必要はないからです。これは旧法下の抗告の濫用、旧法下では競売事件の引伸しを策して異議を申立て、更に即時抗告をする例が多く、そのために徒らに執行の遅延を来していたことににかんがみ、不服申立てをすることができる場合を制限し、執行手続の適正、迅速化を図ろうとしたものです。

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 異議を申し立てることのできる者は、債権者、債務者、利害関係ある第三者です。
 異議は、申立の利益がある期間内であれば、いつでも申し立てることができるが、売却代金が納付された後は許されません。
 異議の申立ては、期日(この場合の期日とは売却決定期日とか配当期日が考えられる)に口頭で述べるもののほか、手続の安定のため必らず書面でしなければなりません。また、引伸しやいやがらせの目的で、理由なく執行異議の申立てをすることを防止するため、申立ての際に異議の理由を明らかにしなければならないことになっています。
 異議の理由は、執行裁判所が執行を実施するに際して、自らの責任において調査判断して遵守すべき執行手続に関する形式的な瑕疵を理由とする場合に成り立つ。実務上強制競売開始決定に対する異議の理由として考えられるものは、債務名義若しくは執行文その他証明書類の送達の瑕疵を理由とするもの、当事者能力、代理権の欠陥、法定文書の不提出などです。そのほかに管轄違いや、期限未到来、執行力のある債務名義の正本の欠絃、執行停止命令の正本が提出されたにもかかわらず、開始決定がなされたことなど、いずれも異議の理由となります。
 異議の申立てがあったときは、執行裁判所は、異議申立てが理由があるように見え、更に審理を必要とすると認めるときは、執行異議についての裁判が効力を生ずるまでの間、職権をもって担保を立てさせ、若しくは立てさせないで執行停止等の裁判をすることができます。
 異議を申立てた者は、執行裁判所の職権発動を促す意味で執行停止を求める申立てができます。この申立には手数料を要しない。
 執行停止を命ずる裁判は、申立人及び相手方に対して告知しなければならない。
 この執行停止等の裁判に対しては、不服申立てをすることはできない。
 執行停止がされないときは、異議の審理に関係なく、執行手続は続行できる。
 執行異議の申立てについては、申立人提出の書面によって審理し、口頭弁論を開いてすることは原則として行われない。
 執行異議の申立てを却下(異議の理由を明らかにしないときは手続違背により却下される)又は棄却する旨の決定に対しては、執行抗告は認められないから執行裁判所は直ちに手続を続行する。新たな異議理由があるときは、債務者らは再度執行異議の申立てができる。
 異議を理由ありとして認容するときは、執行裁判所は競売開始決定を取消して競売の申立てを却下する。この決定(決定は申立人及び相手方に告知する)に対しては、執行抗告をすることができる。したがって、確定しなければ効力を生じない。
 この場合、執行裁判所は、執行抗告がないことを確認した後又は執行抗告がされても、抗告裁判所において抗告棄却の裁判があり、同裁判が確定したときは、執行裁判所の裁判所書記官は決定正本を添付して差押え登記の抹消登記の嘱託をする。執行抗告により原決定が取り消されたときは、執行手続を続行することになります。

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