債務名義に係る請求債権の一部について執行を求めるとき

 強制競売は債務名義に記載された一定の金銭債権について、その弁済を受けるためになされるのであるから、債権者はいかなる債権について、弁済を受けようとするかを明らかにしなければなりません。この債権が特定することによって、競売手続進行の可否、売却の範囲の確定があり得るのです。したがって、この意味において一定の債権の表示は必要欠くことのできないものであり、この特定表示がないときは、申立ては不適法です。債務名義に記載された請求債権の一部についてのみ強制競売を求めることは債権者の自由であるから、この場合は申立書にその旨とその額を明確に記載しなければなりません。一部請求の場合には、禁反言の趣旨等からして競売手続開始後において請求債権の拡張(残元本を請求するような場合)は許されないと解されます。残債権についての請求は、配当要求の終期までに配当要求の申立てをするか、更に強制競売の申立てをして二重開始決定を受けるほかない。しかし請求債権についての利息、損害金債権はとくに申立書に記載されていなくても、差押えの効力は附随債権に対して当然に及ぶので、売却代金の配当の際債権計算書により補充を許し配当をしてよい。しかし、この附帯請求についても申立書に記載されていないと配当時の拡張を認めない実務の取扱いがあるので注意を要します。数個の債務名義若しくは一個の債務名義に基づいて数個の債権の請求は、申立ての客観的併合として許されます。

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 不動産に対し強制競売の申立てをするについては、強制執行一般の要件である執行力のある債務名義の正本及び民事執行法二九条、三〇条、三一条の各要件を具備した旨の証明書を添付し、そのほかに競売手続上必要とする次に挙げる書類を添付しなければならなりません。
  強制競売は債務者の責任財産に対してなさるべきものであるから、債務者の所有であることを証明するために、債務者名義の登記簿謄本を添付する(債務者名義になっていない場合は、強制競売の申立ては却下される)。この登記簿謄本は最近のものを添付させるべきで、実務は一カ月以内のものを添付させている。
 目的不動産が、区分した建物である場合は、当該区分建物についての登記簿の抄本で足りる。一棟の建物全体の謄本を添付させる必要はありません。
 登記がされている不動産とは、所有権の登記がされたものだけでなく、表示の登記だけがされている場合で、その表題部の所有者欄に債務者の氏名及び住所が記載されているものを含む。この場合には、その登記簿謄本を添付すればよい。表題部の所有者欄の記載は、甲区欄のように「権利に関する登記」ではないが、そこに記載された者は、所有権保存登記を申請することができるし、差押えの登記もできるという不動産登記法上強い推定力が与えられているからです。
 表示の登記だけがされているが、表題部の所有者欄には債務者以外の者が記載されている場合には、当該不動産が債務者の所有に属することを証明する文書を添付しなければならない。表題部の所有者の記載は権利に関する登記ではないから、他の文書により債務者の所有であることの証明ができれば、表題部の所有者の推定が破れると考えられるからです。この証明文書は私文書であると公文書であるとを問わないのであって、次における証明文書の説明を参照されたい。裁判所はこの場合所有権の有無を審査して開始決定をすることになります。
 未登記不動産のうち、不動産執行の対象となるのは、土地、建物及びその共有持分に限られますが、これについて強制競売の申立てをするには、目的土地又は建物が債務者の所有であることを証する文書を添付すべきであることは当然です。
 この文書には特に限定はないが、公簿を主管する官公署の証明書をもってするのが通例です。そのほか私文書(建築請負人作成の証明書とか、地主の証明書のごとき)でもよいわけで、要は裁判所が右の事実の証明に適すると認める書面であればよい。既登記の建物についても、増築後表示変更の登記を経ないために、登記簿の表示と実際とが符合していない場合には、登記簿謄本を補うために証明書を添付するのを相当とします。
 未登記不動産について差押えの登記を嘱託するときは、差押えの登記をする前提として、当該土地又は建物について登記簿を開設する必要上嘱託書に土地については地積の測量図及び土地の所在図を、建物については建物の図面及び各階の平面図を添付することになっているので競売申立の際にはこの書類を添付しなければなりません。
 債権者において、各証明文書を提出せず、又は提出した文書によって証明ができないときは、債務者の不動産であることについての証明なしとして申立却下の裁判を受けることがあります。
 民事執行法は、強制競売において土地及びその土地の上にある建物が、債務者の所有に属する場合に、売却の結果所有者を異にするに至ったときは、その建物について抵当権が設定されていない場合でも常に法定地上権が設定されたものとみなされ、また、その土地の上にある立木についても、法定地上権が成立することとなったため、執行裁判所は物件明細書にこれらの法定地上権の成否を明らかにしなければならないこととされました。そのために法定地上権の成立する地上建物、地上立木の所有関係や、抵当権設定の有無を判断する資料として、差押債権者をして強制競売申立時にこれらの登記簿謄本を提出させることにしたものです。地上建物の登記簿謄本の添付がないときは、地上建物が存在しないものと一応考えて手続を進めて差し支えないが、登記された建物があるのに添付しない場合、あるいは未登記の場合などが考えられるので、債権者に確認し、もし未登記であるとか、建物が存在しない場合には、申立書に附記させる取扱いがよいでしょう。
 現況調査により地上建物の存在が判明したときは、登記がされているものについては債権者をして登記簿謄本を追完させるべきです。

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