強制競売の申立

 民事執行の申立ては、書面でしなければなりません。民事執行が国民の財産権に直接重大な影響を及ぼす手続であること、申立ての内容として細かい数値が記載されることが多いことなどから、民事執行の手続全般について書面による申立てが義務づけられたのです。
 強制競売の申立書には、次の事項を記載しなければなりません。
 債権者、債務者及び代理人の表示。債権者、債務者とは、執行債権者及び執行債務者のことであって、誰から誰に対し強制競売の申立てをするかという執行当事者を特定する必要上申立ての要件としたのです。債権者、債務者は、自然人であるときは氏名及び住所を、法人であるときは名称及び主たる事務所又は本店の所在地を表示し、債権者、債務者を特定するに足る程度に記載することを要します。そして、氏名、住所は申立書に添付する執行力のある債務名義の正本に表示されているところと符合することを要します。また、債務者の氏名、住所は、添付書類としての登記簿謄本、未登記の不動産については物件の所有証明書に記載した所有者の氏名、住所とも符合しなければなりません。差押登記の嘱託をするうえにおいて登記簿の表示と符合していないと登記ができないからです。登記簿謄本等の住所に変更があった場合は、旧住所と新住所を併記すべきです。この場合は、この事実を証明する住民票、戸籍の附票、法人の代表者の場合は商業登記簿謄本を添付します。
 住所の記載は、債権者、債務者の同一性、不動産の帰属の同一性等の認識及び強制競売手続上の各種の通知又は書類の送達等を確実に行う必要からその記載が要求されています。

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 競売申立前に債務者が死亡し、相続人の存在又はその所在が不明な財産は、法人とみなされるから、相続財産である不動産に対し競売の申立てをするには、民事訴訟法五八条、五六条の準用により執行裁判所に特別代理人選任の申請をしたうえ競売の申立てをすることになります。相続人がないため相続財産管理人が選任されている場合には、相続財産名義に登記をして、相続財産管理人を表示して競売の申立てをします。
 競売開始後に債務者が死亡した場合には、そのまま手続を続行できる。ただし、その後の送達、通知等の手続をする必要上、債権者は相続人を明示して届出なければなりません。
 不動産の共有持分に対する強制競売の申立ての場合には、債務者である共有者の氏名、住所と、債務者の有する持分の割合を記載すべきです。最低売却価額は債務者の持分について定めることになるからです。
 ちなみに、共有持分の競売については、買受人は共有関係の存続というよりも、他の共有者に高価に売りつけることを目的として買受ける事例が多く見受けられることは今後の研究課題と思われます。
 強制競売の申立ては代理人名義ですることができますが、この場合は、申立書に代理人の氏名、住所を表示します。民事執行法は、執行裁判所でする手続のうち、訴え、それに付随する仮の処分の申立て、執行抗告に係る手続を除き、民事訴訟法七九条一項の規定による支配人、親権者等の法定代理人、弁護士以外の者であっても、執行裁判所の許可があれば代理人として諸々の申立てができることになったのです。弁護士以外の者が申立てる場合は、申立てと同時に代理人許可申請をする。強制競売の申立てを代理人名義ですることがあるが、これは代理人となることが許可されることを条件としてされたものと解すべきです。なお、法人も代理人となることができます。代理人は、一般的には会社の従業員、親族の場合には許可されるであろうが、代理人許可申請には、本人と代理人となるべき者との関係を記載し、これを証する文書を添付しなければなりません。
 執行裁判所から代理人となることが許可されると、訴訟代理人に関する民事訴訟法八〇条以下が代理人について準用されることになるので、申立て以後の手続は当該代理人によってなされます。
 訴訟代理人である弁護士は、委任を受けた事件については、強制執行に関する訴訟行為をすること、弁済を受領することができるから、判決などに代理人の表示があり、その代理人が強制競売の申立てをするについては、特別の委任を受ける必要はないので、委任状の添付は必要としないのです。しかし、その後解任されていないことを証明するためもあり、裁判所も後に問題を残さないことを理由として、申立ての際に改めて委任状を提出させています。もっとも実務では申立ての取下げの場合の特別授権の有無のためのみに提出させている取扱いが多いようです。
 債務名義は民事執行法二二条各号に掲げるものを、事件番号等によって特定して表示します。一個の和解又は調停調書等に数個の債務名義が存在する場合には、どの債務名義に基づいて強制執行を求めるのかを明らかにしなければなりません。
 不動産の強制競売の場合には、不動産がどのように評価されるのか、どのような優先債権者が出てくるのか判らないため、超過差押禁止の原則は採られていないので、申立債権者は、請求債権の多寡にかかおりなく債務者所有不動産全部について強制競売の申立てができる。強制競売の申立書には、競売の対象となる不動産を特定するに足りる事項を記載するのであって、数個の不動産に対しては、執行裁判所を同じくする限り同時に申し立てることができる。登記してある不動産の場合は、登記簿の表示欄に表示してあるものと符合していることを要する。附属建物があるときは、その附属建物も併せて表示し、工場財団を組成しているときは、その組成物をも表示します。区分所有権のときは、区分された位置を明確にするために、図面を添付するのがよい。登記のある不動産の現況が、登記簿面と異なっていても、目的不動産としての同一性が認められる限りは、競売手続を進行することは差し支えない。この場合、執行官の現況調査、評価人の評価の際の資料とするために、目的不動産の同一性が認められる書面と、現況を記載した書面を提出するようにすべきである。競売すべき不動産の範囲が明確でない場合は競売物件は特定できないことになり申立ては不適法です。
 登記簿の記載と実物とが著しく相違していて、その同一性が認められない場合は、登記簿面の不動産はもはや存在しないことになるので、登記簿の表題都の変更登記を経た後に申立てをすべきです。
 ある土地について特別都市計画法による換地予定地の指定がなされていても、それは換地処分そのものではないから、従前の土地につき読売申立てをなすことができるので、従前の土地を表示します。ただし、最低売却価額の決定には換地予定地の地積その他が斟酌されるので換地予定地も併せて表示すべきです。
 未登記不動産の場合は、物件の所有証明書記載のように表示する。なお未登記の場合は、登記官は、差押登記の際に職権でその不動産の保存登記をすることになるので、裁判所は債権者をして申立ての際に不動産の表示の項に未登記である旨を附記させるのがよい。
 目的物が農地である場合には、買受希望者は都道府県知事等から買受適格証明を得た上でないと買受申出ができないから、農地であることを明確に表示すべきです。
 強制執行の方法とは、強制競売の開始を求める旨を記載します。

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